ひきこもり支援グループ
「ひきこもり」とは
ひきこもりは、6ヶ月以上社会参画せずに自宅に留まり続ける状態のことで、ひきこもり当事者はコロナ禍を経て国内140万人を越えると推定されています。若者だけでなく近年では中高齢者の8050問題も深刻であり、大きな社会問題になっています。ひきこもりの背景に、統合失調症・うつ病・不安症・発達障害といった精神疾患を併存していることが稀ではなく、実は、こうした心の病を治療することでひきこもり状態から回復することができるのです。
しかし、ひきこもり当事者の多くは対人不安や恥意識のため、他人との生身の交流を避けがちで、特に初期では当事者が自ら医療機関や相談機関を直接訪れることは稀です。当事者に限らず家族も精神疾患やひきこもりに対する偏見等により、どこにも相談できずに見て見ぬふりをしがちで、こうして支援開始は大幅に遅れ、長期化の大きな要因になっています。
グループ代表の加藤は、2012年に九州大学病院に世界初のひきこもり研究外来およびひきこもり研究ラボを立ち上げ、地域のひきこもり支援機関と連携しながら支援法の開発を進めてきました。2025年4月に北海道大学病院に着任し、北大を拠点として道内での包括的なひきこもり支援体制構築のための準備を進めています。
家族が最初に支援者になるために
ひきこもり支援のはじめの一歩は、同居する家族が、ひきこもりや精神疾患に対する正しい知識を身につけて、適切な対応法を習得することです。ラボでは、「家族が最初の支援者になる!」をモットーに、5つのステップ「ひ・き・こ・も・り」による家族向け教育支援プログラムを開発しました(図)。受講により、家族が子どもに適切な声かけをできるようになり、当事者が医療機関や支援機関へより早期に相談できるようになることが期待されます。どこにいても受講できるようにオンラインで受講可能な家族教室も開設しています。バーチャル・リアリティ(VR)やメタバースといったデジタルツールを活用した支援法開発も進めています。詳細は、ラボのHPをご覧ください。

「ひきこもり外来」開設にむけて
九州大学病院では『気分障害ひきこもり外来』という名前の専門外来を開設してきました。専門外来では、併設する「ひきこもり研究ラボ」と連携し、最先端の評価法・治療法・支援法を導入し、生物・心理・社会・社会といった様々な側面から一人一人の状態/状況を把握し、当事者や家族に丁寧にわかりやすくフィードバックし、最適な治療あるいは支援法を提案しています。北大病院でも今年度中に同様の専門外来を立ち上げるための準備をすすめています。
北大病院がひきこもり支援拠点となり、ひきこもり支援が道内で普及することで、一人でも多くの当事者そして家族が笑顔を取り戻すことを願っています。
文責:加藤隆弘