臨床神経生理グループ

臨床神経生理グループ(通称:てんかんグループ)は、てんかんを中心とした臨床と研究に取り組んでいる。てんかんは人口のおよそ1%弱にみられる頻度の高い神経疾患であり、患者の約43.3%が精神疾患を併存すると報告されている。このような背景から、てんかんと精神疾患は密接に関連しており、診療においても「てんかん単独」ではなく、「てんかん+ASD(自閉スペクトラム症)」「てんかん+精神病」といった併存状態を含めた包括的な視点が求められている。当グループでは、精神疾患に対する理解を深めながら、患者さんを全人的に捉える診療を重視している。

主な活動として、定期的な脳波検討会を通じた脳波判読のスキル向上を図るとともに、年間15〜25件のビデオ脳波モニタリング(VEEG)を実施している。VEEGの一部は、MRI、PET、SPECT、脳磁図、心理検査など複数のモダリティを組み合わせた精査の一環として行い、てんかん外科の適応判断にも寄与している。診療連携においては、院内では脳波検討会や脳磁図カンファレンスを通して小児科・脳神経内科・脳神経外科と緊密な連携を行っている。また、院外では、道の事業である「北海道てんかん地域診療連携体制」において、てんかん三次診療施設としての役割も担い、道内全体のてんかん診療ネットワークの中核を成している。

このような活動を通して、当グループでの研修では、てんかん専門医の申請に必要な経験(50例など)を十分達成できるほか、心因性非てんかん性発作(PNES)との鑑別・併存の診断についても実践的に学ぶことができる。PNESは、てんかんと鑑別することが困難な病態であるものの、患者本人の苦しみや葛藤を理解しようとする精神医学的観点と、てんかん発作の出現様式について示唆を与えるてんかん症候学的観点を合わせて検討することで、鑑別の精度を高めることが可能となる。

研究面では、これまでに多様なテーマに取り組んできた。たとえば、てんかん患者における皮膚電気活動の低下に関する報告、難治性てんかんの非手術症例の長期経過に関する研究、特発性全般てんかん患者の受診行動の特徴を明らかにした調査などが挙げられる。また、クロザピンによる副作用としてのてんかん発作にも着目し、精神科薬物療法と神経疾患との関連についても探究を続けている。

今後も当グループは、てんかん患者の精神的側面に十分配慮しながら、患者が社会の中で安心して生活を送れるように継続的に支援を続けていく。

文責:臨床神経生理グループチーフ
 堀之内 徹