お薬の治療で症状の改善が
感じられない方に向けた
クロザピンという
新たな治療の選択肢
患者・家族および医療従事者が安心して
クロザピン治療に取り組めるように
支援いたします。

治療抵抗性とは?
今まで何種類かの薬をきちんと服用しているにも関わらず、辛い症状が良くならない、治療薬を服用すると体が動かしにくくなる、足がムズムズする、じっと座っていられないなどの症状があり、治療を続けることが難しいなどの経験はありませんか?
このような場合を治療抵抗性といい、統合失調症患者さんの約3割がこの状態にあるとされています。

クロザピンとは?
クロザピンは「治療抵抗性」の統合失調症に治療効果が実証された唯一の薬であり、クロザピンへの治療変更により、辛い症状を改善できる可能性がございます。

クロザピンの副作用は?
注意すべき副作用として、無顆粒球症(白血球が急激に減少してしまう)や糖尿病(糖尿病になる、あるいは症状が悪化する)があげられます。
これらの副作用をチェックするために、治療開始から約半年間は毎週の血液検査が義務づけられています。これらの副作用は治療を開始してから2-3か月以内に起こることが多いため、クロザピンの治療開始は入院中でのみ行われ、治療開始後18週間以上の入院が必要となります。
クロザピンはどこで使える?
クロザピンは処方できる医療機関や医師が登録制となっています。
クロザピン治療の準備や流れは?
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- 薬による治療歴(薬の種類、服用量、服用期間)を確認します。
- 症状の強さを評価します。
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説明を行った後、その可否をご判断いただきます。 -
- クロザピンの治療は白血球の数が一定の値を下回ってしまうと、継続できません(まれに治療により、白血球の数が急激に減少してしまうことがあるため)。そのため、血液検査により、白血球の数を確認します。
- 白血球の数が少なかった場合は、栄養価の高い食事の摂取や適度な運動を実施いただき、改善が認められない場合は薬による治療も検討されます。
クロザピン治療を開始した患者さんの声
ソワソワしなくなり、集中力が増しました。不安になることが減り、気分も落ち着きました。
考えがまとまるようになり、テレビも長い時間観ることができるようになりました。イライラしたり気分が落ち込むことも減りました。
時間が経つにつれて妄想と現実の区別がつくようになり、幻聴も減っていきました。元気になり、活動ができるようになりました。
患者・家族向けの情報
クロザピン治療の概要
治療抵抗性の定義
統合失調症の約3割が治療抵抗性を示すことが報告されております。治療抵抗性は反応性不良と耐容性不良に大別されます。
反応性不良
以下の条件を満たす抗精神病薬が2種類以上ある(そのうち、1種類以上は非定型抗精神病薬である)
- 十分量の投与(クロルプロマジン換算600mg/日以上)
- 十分期間の投与(4週間以上)
- GAF(Global Assessment of Functioning)評点が41点以上になったことがない
耐容性不良
非定型抗精神病薬のうち、2種類以上による単剤治療を試みたが、以下のいずれかの理由により十分量の投与ができない
- 中等度以上の遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、あるいはその他の遅発性錐体外路症状の出現、または悪化が認められる
- パーキンソン症状、アカシジア、あるいは急性ジストニアの出現し、常用量上限の抗パーキンソン薬投与を実施しても改善がみられない
クロザピンについて
治療抵抗性統合失調症に対して、適応を有する唯一の薬剤である。治療抵抗性統合失調症の3-6割程度に有効であることが報告されています。
クロザピンの治療は陽性症状の改善に加え、衝動性や他害行為、自殺リスクの軽減効果を示すことも報告されています。さらに、治療継続率も高く、入院期間の短縮や再入院リスクの低下にも寄与することが示されています。
一方で、その治療効果は治療抵抗性統合失調症と診断されてからクロザピン導入までの期間が短いほど高いことが示されており、早期のクロザピン開始が推奨されています。

治療の流れ
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- 薬歴(抗精神病薬の種類、服用量、服用期間)を確認します。
- 反応性不良の基準の場合、GAF(Global Assessment of Functioning)を評価します。
- 耐容性不良の基準の場合、DIEPSS(Drug-Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale)を評価します。
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※クロザリル適正使用委員会のホームページの資材・様式から取得可能です。
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- 血液検査(必須):投与開始前10日以内に白血球数および好中球数、血糖値(空腹時または随時)およびHbA1c検査を行います。白血球数が4000/mm3以上、かつ、好中球数が2000/mm3以上の場合、クロザピンの投与を開始できます。
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- 規定※に従い、血液検査(白血球数、好中球数、血糖値、HbA1c)を実施します。クロザピン処方時に血液検査を確認する必要がございますので、採血後すぐに検査結果がわかるような検査体制の構築が必要となります。
※クロザリル適正使用委員会のホームページの資材・様式のCPMS運用手順からご確認いただけます。
- 血中濃度測定(外注)を実施し、適切な用量に調整していきます。
- 脳波検査:てんかん発作の鑑別目的に実施します。
脳波異常は発現率の高い副作用ではありますが、てんかん発作が生じる可能性があるのは5%未満とされています。そのため、ミオクローヌス発作や脱力発作などが認められる場合や打撲や転倒などがみられ、目撃されていないてんかん発作の存在が疑われる場合に検査の実施が推奨されます。 - 心エコー検査:心筋炎の鑑別目的に実施します。
心筋炎の発症は稀(0.1-3%程度)ではありますが、重篤な副作用であるため、注意が必要です。治療開始後6週間に生じることが多く、トロポニンとCRPの測定がスクリーニングに有益とされています。これらの検査によって、心筋炎が疑われた場合は心エコー検査の実施が推奨されます。
- 規定※に従い、血液検査(白血球数、好中球数、血糖値、HbA1c)を実施します。クロザピン処方時に血液検査を確認する必要がございますので、採血後すぐに検査結果がわかるような検査体制の構築が必要となります。